マックス賞
ゆかかなのママさん(長崎県 / 40代)
我が家の娘たちは、クリスマスが近づくと、サンタクロースあての手紙を書き、外から読めるように、窓ガラスに貼ります。三年前、次女が小学一年生だったころの手紙に、こんな言葉が書かれていました。「サンタさんへ。うさぎさんのぬいぐるみがほしいです」そうか、なるほど。しかし、手紙には先がありました。「お母さんは、私とお姉ちゃんに洋服をいっぱい買ってくれるけど、自分は何も買わないので、お母さんに服をプレゼントしてください」小さな娘の優しさに胸がいっぱいになり、このことは心に留めて一生忘れないだろうなと思いました。そして、にじんで見える手紙には、更に続きがありました。「お母さんのサイズはLです」
もどきさん(神奈川県 / 40代)
私にはできない。いや、絶対にできるよ。そう言って二人で始めたスキューバダイビング。君はいやいや講習を受けていたね。それが今はどうだい。マンタに会いたい、イルカにタッチしたい、海外にも行きたい。俺は君の後を追うばかり。海辺のリゾートで、二人はいつも早起き。車椅子を押す俺。こぼれそうな君の笑顔。今日もすばらしいダイビング日和になるよ。君と海、そしてついでに俺、みんな合わせてホッチキスで止めちゃおうね。
春を待つうっちーさん
(三重県 / 20代)
2010年5月、私の心はばらばらだった。仕事からも離され通院が必要になった。唯一楽しいと思うことが四コマパロディ漫画を描くこと。ある日、そのことをふと主治医の先生に言うと「見せてよ」。それ以来、先生は私の読者になってくれた。今、書き溜めたものを製本して冊子を作ろうとしている。ばらばらになった心もこれでひとつに綴じられる。そんな気がしている。
ジュアリョーサさん(京都府 / 30代)
9歳の息子のことです。毎年寒い季節も半袖や薄着で過ごし、元気だねーと周囲から言われていた子が、プチ肺炎で自宅安静に。小児科での受診中、先生に「ご飯はどう?」とちゃんと食事ができているかを聞かれたのに、「おいしい!」と即答。先生も私もえっ?っと一瞬思って、顔を見合わせて笑ってしまいました。私は母として、おいしいの言葉に一日中嬉しかったです。その言葉を発したときの息子の顔と言葉を、私の心にホッチキスでとめました。
ポタージュさん(静岡県 / 10代)

あと四ヵ月後、この家から旅立つ。今まではずっと早く家を出て一人暮らしをしたい。そう思っていた。でも今は楽しみな気持ちもある反面、悲しい気持ちもある。
生まれてきてから十八年。毎日顔を合わせてきた家族。もちろん怒られることも、腹が立つこともあった。でも常に味方でいてくれたのは家族だった。毎日家族と顔を合わせることも、言葉を交わすことも当たり前だった。それがもうあと四ヶ月後には今までの「当たり前」ができなくなる。大学入学の準備が進むと同時に悲しみも湧き出てくる。今になって家族をもっともっと大切にするべきだったと後悔することもある。
私が今日まで生きてこれてあと四ヶ月したら自分の夢を叶えるために家を出ることができるのは「家族」のおかげだと思う。夢を叶えるためにも、背中を押してくれる家族のためにもこれから頑張ろうと思う。そして心安らげる家族にたくさんの恩返しがしたい。
恵水さん(群馬県 / 50代)
一年もの無職の悲しみは、「もう働き口はない」という諦めに変わっていた。そんな折、週三日のみのパート募集広告を見た。電話口の採用担当者は、「五十代の採用は前歴がない。とりあえず履歴書を送れ」とのこと。私は「土俵に乗せてもらえるだけで満足」と送付した。結果は「不採用」。驚いたことに通知書の末尾に、手書き文が添えられていた。
「今回不採用の判断は、年齢が理由ではありません。増員計画自体が白紙となり、当面、現体制で業務を行うためです。採用できなかったのは、私としては非常に残念です」
不採用を思いやる必要などなかったのに、胸が熱くなった。五十六歳の私を惜しんでくれる人がいる。残りの人生に送られた贐として、この「不採用通知」を私の心の真ん中にホッチキスで留め置き、再チャレンジのエネルギーに変えたい。
ぽこさん(新潟県 / 50代)
「もう、何をしてあげてもすぐに忘れるんだもん。張り合い無いよね」認知症の母を嘆く私に娘がポツリ。
「そうかなぁ。今こうして笑っているおばあちゃんがいる。それだけで私は十分だけど」その言葉にハッとする私。トンチが利いて、明るくて優しい母が私の自慢だった。
無償の愛で私たちを育ててくれた大好きな母に対して私は何て冷たい娘なんだろう。
ええい、照れずに言ってみよう。
「ねえ母さん。私は母さんの娘に生まれて本当に幸せだよ。ありがとね」
「いえいえ、こちらこそ和子が生まれてくれて幸せだよ。サンキュー!!あれれ……?私が生んだんだっけ?」思わずコケる私を見て大喜びの母。こんな小さな幸せも忘れないようにホッチキスで留めちゃお。