マックス・U-18大賞
マックス・U-18大賞 < 高校生の部 >
木原 里菜さん(三重県 / 17歳)

私は二年になってから進路のことを意識するようになり、将来に対する不安を抱えながら毎日を過ごすようになった。小さいときに習っていたピアノも小学生で辞めてしまってから自分にできることなんてないと自信をなくしてしまった。
そんなある日、単身赴任中の父から一通のメールが届いた。「ピアノを教えてくれ」突然だったので驚いて理由をたずねると、新しいことに挑戦したいからと言っていた。
父はいつも陽気でくだらない話が大好きで、家を離れてからは毎日のように電話をかけてくるような人だ。正直、私は続いて一週間程度だろうと思っていた。
練習一日目、父が送ってきた動画はとても酷かった。リズムなんかはめちゃくちゃで、一緒に見ていた母と声を出して笑った。その日の電話で父にダメ出しをすると、次の日に送られてきた動画でその部分がとても上達していた。
それからは毎日、送られてくる父の動画に感想を言うのが日課になっている。ピアノを弾いている父の顔はとても楽しそうで、挑戦することってこんなにわくわくするものなんだと気付かされた。
まだ不安はあるけれどそんな父の姿に私は勇気をもらっている。がんばろう。今日も送られてきた父のまだ下手くそなピアノを見て思った。
マックス・U-18大賞 < 中学生の部 >
岸本 依智日さん(沖縄県 / 15歳)

大切にしていた好きなキャラクターのキーホルダーをなくした。祖母から誕生日にもらった物である。その日はテスト終わりの打ち上げに友人たちとショッピングモールへ来ていた。帰る時、いつもは自分1人で歩く道にもう1人。最近初めて喋った子だ。話題が尽きそうで内心ドキドキだった。
キーホルダーがなくなったことに気づいた時はすでにバスが来ていた。しかし、「一緒に探すから」と言う。2人で思い当たる場所を探しまわりながら、自然と会話が弾む。不安だった気持ちもどこかへ行ってしまった。キーホルダーが見つかった時は嬉しかったがそれ以上に相手の優しさに気付けたことが何よりも嬉しかった。思いやりを分けてもらえたことが幸せだった。
彼女が私に示してくれた優しさはキーホルダーと同じくらい大切な宝物だ。宝物ができたこの時間をずっと忘れられない。
マックス・U-18大賞 < 小学生以下の部 >
KANさん(佐賀県 / 9歳)

最近、お母さんと手をつないで歩くのがはずかしい。お母さんは「さびしいなぁ。手つなごうよ~!」とさわぐけど、手をつないで歩いているところをお友達に見られたりしたら甘えんぼみたいでかっこわるいじゃんか!
ぼくは空手を習っていて、この前大会で体の大きな子と対戦。怖かったけど試合の直前までお母さんがゆっくりと背中をなでてくれていた。そしたら何だか強い力がわいてきて、いつも以上に前に出て戦うことができた。結果は負け。くやしくて涙が出たけどそのときもお母さんがいっぱい頭や体をなでてくれた。
広島で一人ぐらししているおばあちゃんが骨折をして、あわててお母さんがむかえに行って佐賀に連れてきた。そのときにお母さんがおばあちゃんの手をにぎっていた。おばあちゃんは安心しているみたいに笑顔になった。お母さんの手はまほうの手。ぼくはまだお母さんの手が必要みたいだ。でもはずかしいからみんなに見られないようにこっそりと、ね。