マックス・U-18大賞
マックス・U-18大賞 < 高校生の部 >
ひなぴーさん(富山県 / 16歳)
今年の九月、おばあちゃんが息をひきとった。
「酒ばっか飲んで体悪くなるよ!」
「何言っとん、この酒のために毎日頑張っとるんじゃ。」といつものように口喧嘩が始まる。私はこのやりとりが好きだった。三年前、おばあちゃんにガンが見つかった。そしておじいちゃんは仕事を辞めた。酒だって止めていた。「これでばあちゃんに怒らんなくなって済むわい。」と言っているおじいちゃんの顔はどこか寂しそうだった。おじいちゃんは三年間どんな天候でもおばあちゃんのいる石川県の病院へ通っていた。おばあちゃんと会えるのが三十分だけだとしても片道一時間ほどかけて会いに行っていた。
そして、おばあちゃんはおじいちゃんに自分がいなくなっても生きていけるように家事が何一つわからないおじいちゃんに優しく何度も教えていた。絵を書いて教えていたこともあった。おじいちゃんはおばあちゃんから教えてもらった料理は、また次の日作って病室に持っていっていた。最初はりんごの皮もむけなかったのに、今ではたくさんの料理を作れるようになっている。りんごの皮だって一回も切らさずにむけるようになっていた。
おばあちゃんが亡くなった。
お母さんも弟も私も涙が止まらなかった。おじいちゃんは冷たくなったおばあちゃんの手をとり、「ありがとう。幸せでした。」と鼻の頭を赤くし、涙を堪えながら言っている姿を見て私は、世界一素敵な夫婦だと思った。
マックス・U-18大賞 < 中学生の部 >
キョンキョンさん(岡山県 / 15歳)
「ぎりぎりガール」。私は母に、こんなあだ名をつけられた。なぜなら、私はいつも行動がぎりぎりで、課題・宿題と名のつくものは提出日前日に猛スピードで済ませるという習慣ができあがっていたからだ。そんな私が、ある日、母からこう言われた。
「あなたはいつもぎりぎりだけど、毎回最後には帳尻を合わせてくる。それがあなたのやり方なら、それでいいと思う。」
いつものようにまたガミガミ言われるだろうと構えていた私は、正直面食らった。そして、気付いた。少しずつ自分は、大人として扱われてきているということに。
いつからか、両親の会話で「大人の話よ。」と遠ざけられることがなくなった。私の選択を尊重してくれるようになった。十五歳になって芽生えた「大人」という自覚。母のあの一言は、その輪郭をはっきりさせるものだった。
きっと、これからも少しずつ、ガミガミ言われることは減っていくのだろう。そう思うと、嬉しいが不安で、少し寂しい。母の一言は、私に「子供」という自覚も気付かせたのだった。
マックス・U-18大賞 < 小学生以下の部 >
ユウカさん(大阪府 / 9歳)
私の2才~4才の時に、いちごがりに行った。そこで、むちゅうになってつんでいると石につまずいてころんでしまった。その時、つんでいたいちごの1つがおちて、その上にころんだのだ。やわらかい土だったから、まったくいたくはなかったが、ふくにつぶれたいちごがたくさんついてしまった。お母さんにそのことを言うと、にこっという顔をしてトイレにつれていってくれた。お母さんのリュックサックの中に、私のきがえがはいっていた。「私はそのことを思い出してみると、お母さんは私がこうなるのを分かっていたんだな。」と思った。その時から、今をふりかえってみたらたくさん私がこけたり、ぬれたり、ないたり、こぼしたりすると、お母さんのリュックサックにはいつも必要な物が入っていたな、と思った。やっぱりお母さんは、自分の子どもだからこそ、いつどうなるのか、ちゃんと分かるんだな。と私は本当に思う。