マックス・U-18大賞
マックス・U-18大賞 < 高校生の部 >
[ A ]さん(兵庫県 / 18歳)
祖父母の家には、祖母が漬けている梅酒の瓶がある。その中に1本、普通ではないぐらいに長く―僕が生まれたころちょうどその日から―漬けられている梅酒がある。ちなみに普通なら1年ほどで充分おいしいらしい。
つい先日まで、僕はこの梅酒の存在を知らなかったし、こんなにも長く漬けられている理由など知る由もなかった。というのも、その梅酒を残しておくように言ったのは僕の父で、父は僕が中1の頃に他界した。それまでに梅酒のことは聞かされなかった。初めて知ったのは高2の頃だ。
父は、僕が成人したらその梅酒を開け、一緒に飲むのが夢だったそうだ。仕事帰りに祖父母の家に寄ってその瓶を見るたびに、ずっと言っていたらしい。親には言っておいて、息子には言わないとは、なんとも言葉足らずな父親だ。
父の死後はただ淡々と毎日を過ごしていたが、このことを聞いてから、僕も父親と同じ夢を持って生きている。夢が叶うのもあと2年を切ったが、他の家族には、成人したら父と例の梅酒を飲むのが夢だなんて恥ずかしくて言っていない。父も同じ気持ちだったのだろうか。いつの間にか、僕も父親に似るようになったのかもしれない。
マックス・U-18大賞 < 中学生の部 >
ネギヤンさん(神奈川県 / 13歳)
祖母は心配性だ。中学に入って一度も欠かさず駅まで僕を送迎してくれる。「こんなに荷物が重かったら背が伸びない」「暗い道は危ない」と、自転車の荷台に僕の荷物をのせる。その隣を、祖母の自転車がふらつくといけないのでなるべく速く僕は走る。走りながら学校の話をする。
「年をとると運動不足になるから。楽しみで迎えに行くのだから。」
といつも言うが、僕はやはり心配になる。暗い夜道を一人で迎えに来てくれるのだ。
僕は背が伸び、祖母は背が縮んでもう少しで身長がならぶ。しかし、祖母にとってはいつまでも小さい孫なのだろう。できれば僕はもうそんなことをしてもらわなくても大丈夫という所を見せたい気持ちもある。しかし、祖母とおしゃべりしながら帰る道をしばらく楽しみたい。
マックス・U-18大賞 < 小学生以下の部 >
カシワモチさん(大阪府 / 8歳)
「どうしたの?」
小学1年生の時、電車通学をしているわたしは、おりるえきをのりすごしてしまい、ふあんでいっぱいでないてしまいました。その時、高校生くらいのお姉さん2人が、声をかけてくれておりるべきえきまでいっしょについてきてくれました。
「お母さん、しんぱいしているかも。」
と、お姉さんたちに話すと、
「ちょっとまってね。」
と言って、かわいいメモ用紙に何かを書いて、
「お母さんに、わたしてね。」
と言って、わたしにわたしてくれました。
もよりえきでまってくれていたお母さんと、メモ用紙を読んでみると、
「あきえちゃんのお母さま
あきえちゃんしんさいばしまで来てしまったようで、少し帰りがおくれてしまいました。しっかりしててえらいですね。通りすがりのお姉さんより。」
と書いてくれていて、とてもうれしかったです。
お母さんは、
「しん切な人にまもられてよかったね。ありがたいね」
と言って、なみだぐんでいました。
しょう来わたしも、あのお姉さんたちのように、しん切で、心やさしい人になりたいです。