PROJECT STORY 鉄筋結束機 ツインタイア ウォーカーモデルタイプ
徹底したユーザー目線と
チーム力で挑んだ製品開発

OUTLINE

鉄筋結束の未来を変える!

1993年、マックスは世界初の充電式鉄筋結束機を発売し、業界のスタンダードを打ち立てました。主力製品「ツインタイア」シリーズは、大幅な作業効率の向上に貢献し、国内外で多くのお客様に愛用されています。その後継モデル「ウォーカーモデルタイプ」は、現場のニーズに応えながら改良を重ね、身体的負荷を軽減するために腰を曲げない姿勢で結束作業が行えるという、革新的な進化を遂げました。製品がどのように誕生し、発売に至ったのか。現場を大切にするマックスならではの開発ストーリーに迫ります。

MEMBER

  • プロジェクトリーダー

    開発設計部
    1998年入社

    S.S.部長

  • 企画者・メカ担当

    開発設計部
    2008年入社

    T.M.主任

  • メカ担当

    開発設計部
    2014年入社

    N.T.

  • 電気担当

    開発設計部
    2010年入社

    N.N.係長

  • 生産技術担当

    生産技術部
    2013年入社

    S.S.

  • 商品企画担当

    商品企画部
    1995年入社

    T.N.部長代理

ABOUT PRODUCT 鉄筋結束機
ツインタイア ウォーカーモデルタイプ

腰を曲げない結束で身体的負担の低減

  • ツインタイアシリーズの結束スピード・結束力・結束形状はそのままに。
  • 鉄筋に当てるだけで、自重でスイッチが押され簡単・正確に結束。
  • 両手で持つから安定操作。身長に応じて高さも2段階調整可能。

01How did the project start?プロジェクト発⾜の経緯

スラブ現場の労働環境改善によって、
世界のヘルス&セーフティーに応える

スラブ現場の労働環境改善によって、
世界のヘルス&セーフティーに応える

  • S.S.部長

    プロジェクトのきっかけは、鉄筋結束機を使用するスラブ(建築の構造床)現場における作業者の身体的負担をいかに改善していくかという課題にありました。マンションや高速道路などの建設時に作業者は、広大な面積を腰を屈めて長時間作業を行うことで、腰や背中の痛みに悩まされていました。さらには、作業者の高齢化も深刻でした。一方欧州では、立ち姿勢で結束可能な延長棒付きツールを推奨しているものの普及が進まず、世界的に現場の作業改善が課題だったのです。
    鉄筋結束機のトップメーカーだからこそ、作業効率向上とヘルス&セーフティーを両立する製品を作りたい。その思いから2018年4月、ハンディタイプの「RB-440モデル」をベースとした「ウォーカーモデルタイプ」開発プロジェクトが発足しました。T.N.さんやT.M.さんは、当時を振り返っていかがですか?

  • T.N.部長代理

    そうですね。商品企画の私のもとにも、鉄筋結束機の発売当初から「腰を屈めた作業がつらい」というユーザーの声が多数寄せられていました。特に欧州は、ヘルス&セーフティーの意識が高く、改善要望も強かったのです。日本より海外からの要望が多いのはなぜか。実際に海外の現場に行き、作業者の体格の違いによる体勢を目の当たりにし、現状を把握することができました。

  • T.M.主任

    プロジェクトの前段となる出来事があります。入社2年目、ハンディタイプの結束機にアタッチメントを付ける製品を検討しましたが、当時はうまくいきませんでした。2017年10月に企画開発部に異動後、ヘルス&セーフティーに着眼した「片手持ち一体型スラブ専用機」の企画を新たに開始、後にS.S.部長が主体となりプロジェクトが本格始動します。マックスブランド強化のため、この専用機を市場に投入してラインアップを拡大、本体と消耗品を合わせて持続的なビジネスモデルを確立する声が社内でも高まっていましたね。

02What was important to you in the project?プロジェクトを進める上で⼤切にしていたこと

「開発者のエゴになっていないか」
垣根を超えたユーザー調査で使用実態を分析

「開発者のエゴになっていないか」
垣根を超えたユーザー調査で
使用実態を分析

  • S.S.部長

    本当に楽に作業できるか?開発者のエゴで製品を作っていないか?という自問と共に、開発者の主観に偏らないよう、ユーザー様の身体的な負担を定量的に評価することによって、長時間作業の疲労軽減というものがどれだけ達成されているのかも定量化できなければならないと考えていました。設計段階では、手荒に扱われても破損しない堅牢性を確保しつつ、疲労軽減を狙うために開口部の改善や先端形状の設計に検討を重ね、実際の作業環境での改善効果を数値で示すことで、より受け入れられる製品になることを目指しました。

  • T.N.部長代理

    S.S.部長のお話にもあったように、プロジェクトを進める上で最も重視したのは、ユーザー様が結束作業をどれだけ楽にできるかです。片手持ちの延長棒付きツールが以前から存在していたにもかかわらず、普及が進んでいない。何が足りないのか、どこに不満があるのか、その理由を徹底的に分析しました。設計においては機械の仕様や性能も重要ですが、何といってもユーザー様が快適に作業できる機器の実現が一番のポイントでしたね。

  • S.S.部長

    リアルな使用感のフィードバックを得るため、試作品を実際の現場や海外にまで持ち込んだこともありました。改善点を聞き出したかったのですが、私たちへの気遣いもありお客様からは好意的な意見が多く、本音を聞き出せない。そこで、社内の営業や広報などプロジェクト外の社員にも試打してもらう機会を何度も設け、全社をあげて定期的に評価会を実施したのです。そこから発想のヒントも生まれました。

  • N.T.

    社内の協力は本当に大きかったですね。プロジェクトを進める上で設計した部品の検証を自ら行い、狙い通りの効果が得られているかを確認し、他部署との意見交換をしました。この製品は立ち姿勢で使用するため、ユーザー様にとって作業しやすいハンドルの位置と高さがポイントです。現場での使用シーンは様々で、ユーザー様の身長や体格も異なるため、より多くのサンプルが必要となります。開発部、生産部や営業部との協力体制により、最適なハンドルの高さを導き出せたのはマックスのチーム力の強さだと思います。

03What were some of the challenges of the project?プロジェクトで苦労した点

構造、操作性など課題が続出、
チーム力と技術の粘りで乗り越える

  • N.N.係長

    延長棒を取り付けるとバッテリーが下側に配置されるため重心が下がり、取り回しが悪くなるというデメリットがありました。また、ハンドルの操作性が悪いといった課題にも直面しました。さらに頭を悩ませたのが、操作するハンドル部分と作動する機械の電気系統の距離が長くなることで、外部ノイズの影響を受けて誤動作し複数の不具合が出てしまったのです。原因の特定には技術的ハードルが高い課題でしたが、ソフトウェアの調整や検証方法の工夫により問題の箇所を特定し、ハードウェアとソフトウェア両面からのアプローチによりクリアすることができました。

  • T.M.主任

    私の場合、初回の試作機では「作業者様の作業環境改善」をコンセプトにしましたが、具体的な課題設定が不十分で、訴求ポイントがあいまいになり、作業効率が20〜30%低下してしまいました。ユーザー様から効率の悪さを指摘され、次の試作機は作業の再現検証を徹底的に行い、鉄筋の拾い込み用の傾斜設計やトリガーのタイミング調整を改良しました。試行錯誤を重ねた結果、最終的には鉄筋を正確に狙い結束時のタイミングも改善できましたが、作業効率と作業環境改善の両立は大変でした。

  • S.S.部長

    センサー部分のリンク構造の作り込みには相当苦労しましたよね。回転部品とスライド部品の複雑な動作の連動、センサーの反応タイミング調整、鉄筋挿入性を高めるための開口部設計、部品の寸法ばらつきに対応するための精密な構造調整など、様々な点において難航しましたが、新たな構造を確立したいというモチベーション、T.M.さん一人ではなく、チーム全体で考えるという環境があったからこそ、苦労も乗り越えられた気がしています。

  • S.S.

    生産技術の立場で苦労したのは、新材質を使用したボディ部品の金型製作です。当所からスケジュールや、ユーザー様に手に取って頂きやすいコストにすることを優先していたため、樹脂の流動解析技術をフル活用して10パターン以上の解析を行うことで、重大な修正や再設定を回避することができました。設計のN.T.さんとは連携して作業を行うため、「今からいいですか?」という内線が頻繁にあり、毎日のようにN.T.さんのCADの隣に座り、調整を重ねたことも今となってはいい思い出ですね(笑)。

  • N.T.

    今回が初めての設計担当でプレッシャーもありました。S.S.さんとは1カ月近く本当に密なコミュニケーションでしたね(苦笑)。特にユーザー様の身長や腕の長さによって最適な持ち手の高さが異なる中で、ハンドルまでの距離をどのように設定すべきか悩みました。同時に、鉄筋の結束部を狙いやすくする持ち手と機械本体の角度も含め、チーム全員で検証しながら設計を進めていくことで、使用感を大幅に改善することができました。

  • S.S.部長

    N.T.さんがハンドル周りの設計を一手に担当し、S.S.さんが生産技術の観点から部品の強度と仕上げに注力、お互いの専門性を生かしながら最適なバランスを見つけ出すために、せめぎ合っていましたね(笑)。「お客様が喜ぶ製品を作りたい」というメンバー一人ひとりの思いが苦心の末に形になったのだと思っています。

04For the future今後に向けて

全てはユーザー様満足度向上のため、
現場主義でさらなる進化を

全てはユーザー様満足度向上のため、
現場主義でさらなる進化を

  • S.S.部長

    本来の狙いである、「結束する交点をユーザー様が見なくてもなんとなく鉄筋に引っ掛けてただ落とすだけ」というコンセプトを、ユーザー様に丁寧に説明してから使用してもらうという想定だったのですが、発売後すぐにコロナ禍となってしまったため導入説明ができず、ユーザー様がこの製品を最大限に活用できなかったという実態がありました。今後もヘルス&セーフティーを考慮した取り組みを続けながら製品のバージョンアップの際にはしっかりと理解を深めて頂ける機会にしたいと考えています。

  • T.N.部長代理

    私たちの製品が真に価値を持つためには、単に高性能なだけではなく、ユーザー様が安心して使い続けられることも必要です。お客様の使用環境やニーズを綿密に調査し、製品に反映させることで、特に海外市場での信頼性を高め、使用時の不安を解消する頑丈さと耐久性を確保していきたいです。さらに、機械の自動化を進め、革新的な機能を追加することで、作業効率を飛躍的に向上させたいという思いもありますね。

  • T.M.主任

    私はこの企画の段階から国内外の多くの現場を訪問させて頂きましたが、やはり自分の目で見て、ユーザー様の本質的なニーズを把握することで、より実用的で価値のある製品の提供につなげていきたいですね。そして、軽量化や速射の向上などベースとなる機種をさらに磨き上げて進化させることが次なる目標です。

  • N.N.係長

    現場のニーズを的確にとらえて製品仕様に反映する事で、お客様にとって価値のあるモノづくりができると思います。お客様の使用実態を訪問して見聞きするだけに留まらず、今後は現場における実際の製品の稼働データを取得、利活用し、ソフトウェアの観点から顧客や社内への価値提供を行う製品開発もしていきたいです。

  • S.S.

    今回のプロジェクトで実績を上げた流動解析の量産活用や、設計と協働して形状変更検討や新材質検討を実施できたことなど、現場の状況を理解した上で自らの考えや意見を積極的に出してチーム全体で取り組むということ。とにかくこれは継続していきたいです。

  • N.T.

    この機械の設計を通して、「ユーザー様の使いやすさ」の大切さを学びました。今後の設計を行なっていく中でも、機械単体の性能だけではなく、本当に使いやすい機械とはどのような形態なのかを探求しながら、継続的に基礎技術の部分も突き詰めていきたいです。

PROCESS

マックスのモノづくりの流れ

マックスの新製品開発の原点は「お客様の声と現場」

マックスの新製品開発の
原点は「お客様の声と現場」

マックスでは開発部員も製品が使われている現場に入ってお客様の声を聴き、
その作業を観察することから真のニーズやその先のシーズを引き出していきます。
マックスらしい創意工夫に富んだオリジナリティー溢れる製品は、こうした実践の積み重ねから生まれます。
お客様の声を拾い集め、真にお客様に満足される製品仕様を特定し、新製品は世に送り出されます。

マックスの新製品開発の原点は「お客様の声と現場」 マックスの新製品開発の原点は「お客様の声と現場」
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※記載内容は掲載当時の情報です。