気候変動への対応

当社は、2022年9月に取締役会の決議を経て、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同することを表明しました。気候変動問題への対応が重要な経営課題の一つという認識のもと、気候変動に関わるリスクや機会などの特定とその対応等、温室効果ガスの削減に向けた取り組みと情報開示を推進していきます。

ガバナンス

当社は、気候変動問題を含むサステナビリティに関する活動を推進するため、取締役会の監督のもと、サステナビリティ戦略決定機関としてサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置し、また、サステナビリティ委員会の下部組織としてサステナビリティに関する諸活動を推進するサステナビリティ推進委員会(委員長:サステナビリティ担当取締役)を設置しています。
サステナビリティ委員会は、その審議状況や認識した気候変動に関わるリスク及び機会について、取締役会に報告を行うとともに、中期経営計画及び事業計画に反映させ、サステナビリティに関わる活動と事業戦略を統合して持続的な企業価値向上を図っていきます。
気候変動に関わる諸活動は、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会を中心に推進する体制としています。

戦略

気候変動のリスク及び機会が当社にもたらす影響について、シナリオ分析を行いました。
シナリオ分析においては、外部専門家を活用しながら、気候変動に関するリスクと機会の識別及び重要度評価、シナリオ群の定義、事業/財務インパクトの定量評価、ならびにリスクと機会を踏まえた対応策について検討を行いました。
また、複数の温度帯のシナリオを選択・設定するため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)等の科学的な情報に基づく以下2つのシナリオにおける世界観を描き、当社グループへの影響を考察しました。
シナリオ分析の結果、いずれのシナリオのもとでも、当社はレジリエントな経営を行うことが可能と確認しました。
1.5℃シナリオでは、脱炭素化に向けた規制の強化が想定され、炭素税の導入や原材料価格の高騰、より脱炭素を意識した製品・サービスの創出が求められます。
一方、4℃シナリオでは物理的リスクの影響が高まり、工場の操業停止やサプライチェーンの寸断といったリスクへの対応とともにインフラの強靭化ニーズへの対応が必要となります。

項目 気候変動対策・規制等が進む1.5℃シナリオ 気候変動対策・規制等が進まない4℃シナリオ
シナリオ概要 気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命前と比較して気温上昇が約1.5℃以下に抑制されるシナリオ。 有効な気候変動への対策が導入されず、2100年時点において、産業革命前と比較して4℃程度気温が上昇するシナリオ。
世界観 政策・規制、市場、技術、評判などの移行リスクが高まるシナリオ。 自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加などの物理的リスクが高まるシナリオ。
炭素税の導入など気候変動に関する規制が強化されるとともに、消費者の嗜好も環境重視に変化する。 気象変動により異常気象の激甚化が進み、自然災害が増加する。
インパクトを試算する際の
パラメーター
IPCC、IEAの情報を参考にRCP2.6シナリオを使用。 IPCC、IEAの情報を参考にRCP8.5シナリオを使用。
結果概要 主に移行リスク・機会が顕在化。 主に物理リスク・機会が顕在化。
【リスク】
気候変動規制や消費者の嗜好の変化への対応が求められ、コストの増加や環境対応製品の開発が必要となる。
【リスク】
自然災害増加により、工場の操業停止やサプライチェーンが寸断されるリスクがある。
【機会】
ZEH、ZEBの市場拡大や、CO2排出削減効果のある木造建築物など、脱炭素製品のニーズが拡大する可能性がある。
【機会】
建造物をはじめとしたインフラの強靭化ニーズが顕在化する。
対応策 設備投資や研究開発投資は、これまで省エネを中心に行ってきた。今後、脱炭素に向けた規制の強化や環境意識の高まりを踏まえ、省エネだけではなく、製品素材の見直しなどの研究開発投資も推進していく。 これまではBCMS(事業継続マネジメントシステム)により、自然災害等に備えてきた。今後もBCMSの活動を継続し、自然災害へのリスク対応策を強化する。

【共通】

サステナビリティ委員会を中心として、気候変動問題を含むサステナビリティに関する諸活動を推進する体制の下で、リスクと機会の磨き上げを行うとともに、対応策の深化を進める。
分析詳細
区分 事象 主な潜在的財務影響 財務影響 発生時期




政策・規制 炭素税の導入 炭素税の導入によりCO2排出によるコストが増加する。 中期
省エネ基準の強化 省エネ法、CO2排出削減目標の強化による移行コストの増加や基準未達により販売が鈍化する。 短期~中期
再生可能エネルギーの導入 再生可能エネルギーの価格上昇によりコストが増加する。 中期
廃棄物の処理規制の強化 廃棄物処理費用の増加やリユースまたはリサイクル可能な製品に移行する。 中期~長期
技術リスク 環境対応製品の必要性 気候変動対応部品への切り替えによるコスト増や対応遅れにより販売機会を喪失する。 短期~中期
低排出技術への移行 低炭素素材への移行によるコスト増により、製品競争力が減退する。 短期~中期
市場リスク 製品需要の縮小 環境意識の高まりにより、CO2排出量が多い製品の需要が縮小する。 中期~長期
市場の不確実性 エネルギーコストが予期せず変動する。 中期
原材料コストの上昇 原材料コストの上昇を売価に反映できず利益が減少する。 中期
評判 消費者の嗜好の変化 環境対応の遅れにより、販売機会を喪失する。 中期~長期
消耗品素材による消費者からの忌避 CO2排出量が多い消耗品の場合、使い捨てのイメージから消費者に忌避され販売が減少する。 中期~長期
企業の評判 環境対応が遅れると企業イメージの悪化により、採用が困難になり、株価が下落する。 非算定 短期~中期




急性的
慢性的
自然災害の増加 異常気象による浸水により工場の操業停止やサプライチェーンが寸断する。 短期~中期
慢性的 海面の上昇 海面上昇により、事業拠点が浸水する。 長期
平均気温の上昇 森林火災の増加により木材コストが上昇、また熱中症リスク回避による工期長期化により、木造を中心とした建築物が減少する。 中期~長期

資源の効率 市場環境の変化 CO2排出量の削減効果のある木造建築物の増加やZEH及びZEBの市場拡大に伴う新築建築物が増加する。 中期
エネルギー源 エネルギーコスト 再生可能エネルギー設備の導入によりコスト変動を低減する。 中期
製品・サービス 需要の変化 再生可能/リサイクル原料などを使用した環境負荷を低減した製品を開発・販売することで競争力が向上する。 中期~長期
市場 ニーズの変化 強靭化のため、建築物の建替えニーズが高まる。 中期~長期
レジリエンス 製品・サービス 気温上昇に伴う建設現場の作業時間短縮のため、省力機器のニーズが高まる可能性が高い。また、災害に備えてサプライチェーン全体のBCPを継続的に強化することでレジリエンスが高まる。 短期~長期
【時間軸】
当社では、気候変動に伴うリスク及び機会の評価にあたり、以下のように時間軸を設定しています。
  • 短期:~2年程度
  • 中期:3~10年程度
  • 長期:10年程度~

リスク管理

サステナビリティに関する諸活動の一つとして、マテリアリティの特定を実施した結果、気候変動への対応は、ステークホルダーの観点及び自社の観点から重要度が極めて高い課題と位置付けています。
気候変動に関わる活動は、サステナビリティ委員会の下部組織であるサステナビリティ推進委員会が中心となり、リスクの識別、評価及び管理を推進し、サステナビリティ委員会で審議・決定します。
シナリオ分析においては、定期的に新たな規制上の評価等、各リスクの事業/財務インパクトを定量的に評価し、リスクの管理を行います。
気候変動リスク評価の結果は、取締役会へ報告するとともに、中期経営計画及び事業計画の検討に反映させつつ、会社の企業倫理、法令遵守、リスク管理等を推進する機関であるコーポレートガバナンス委員会(社外取締役を含む全取締役が出席、年4回開催)と連携を図り、全社のリスク管理と統合します。

目標と実績

2022年度のCO2排出量は、SCOPE1(事業による直接排出)は1,770t、SCOPE2(電力による間接排出)は13,658t、SCOPE3(SCOPE1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出))は2,848,031tでした。なお、SCOPE3のうち、カテゴリー11(販売した製品の使用による排出)は2,515,136tでした。
当社は、SCOPE3カテゴリー11でのCO2排出量が多いことを踏まえ、気候変動に関わるリスクの最小化のため、CO2排出量を指標として、以下の中長期目標を掲げています。

項目 中長期目標 2022年度実績
SCOPE1、2
カーボンニュートラル
1.2030年にCO2排出量を2018年度比50%削減
2.2042年にCO2排出量ネットゼロ(カーボンニュートラル)を達成
15,428t
SCOPE3カテゴリー11の削減 SCOPE3カテゴリー11の削減(販売した製品の使用に伴う排出量)について、2030年にCO2排出量を2018年度比30%削減 2,515,136t
CO2排出量推移(SCOPE1、2、3)
CO2排出量推移(SCOPE1、2、3)
SCOPE1、2におけるCO2排出量推移と目標
SCOPE1、2におけるCO2排出量推移と目標
算定方法等の見直しにより、過去に遡って、CO2排出量を修正しています。